ミュージカル俳優のための基礎発声 ~第6回 裏声ミックスvsベルティング編~
Dec 25, 2025
こんにちは。
REBELTING ACADEMY NEOトレーナーのKahoriです。このシリーズでは、ミュージカルを志す方、現役で活動されている方に向けて、私がミュージカルの現場で感じてきたことをお伝えします。
長年の疑問として、
「日本と海外のミュージカルの俳優さんって、そもそもの声質が違う感じがする」と思っていました。
有名なミュージカル曲、映画やアニメの吹替でもその違いをずっと感じていました。皆さんも感じたことはありませんか?
骨格や体格が違うから?言葉が違うから?
それもあるとは思いますが、声のベースになるものが違いました。
今回のテーマは「裏声ミックス vs ベルティング」です。
▪️裏声ミックスとは?
日本のミュージカルでよく使われているのが、裏声ミックス。
声楽的なアプローチでミュージカルを教える先生も多く、その場合は裏声ミックス系の発声になることがあります。
裏声をベースにし、軽く柔らかく透明感のある響きを作ります。
さらに鼻腔共鳴を入れると、表情を変えて地声っぽい響きに近づけることもできます。
ただ、この「地声っぽい」は本物の地声ではなく、借り物の地声感。
響きとしてはそれらしく聞こえても、ベルティングのような圧倒的な声のエネルギーは出ません。
心を揺さぶるようなパワーや厚みを生む声とは別物です。
▪️ベルティングとは?

REBELTINGで学ぶベルティングは、地声の響きを保ったまま高音域まで行き、喉の力みなく声を繋げていく発声法です。
実はミュージカル経験者の中には、鼻腔共鳴を強く使った裏声の響きを「これが地声だ」と思ってる方も少なくありません。
この響きはパワフルに聞こえることもありますが、地声とは別ルートなので、ベルティングのような心を突き動かすパワーは生まれません。
ここを混同すると、高音での発声の選択肢や表現力が大きく制限されてしまいます。
▪️OneVoiceとグラデーションエクササイズ
REBELTINGの最終的なゴールがOneVoice。
地声と裏声の境目をなくし、声が一本のまま自由に行き来できる状態です。
そのための重要な練習がグラデーションエクササイズ。
これは「薄い裏声」から始まり、徐々に喉を開けて「ピュアベルト」という強い地声まで繋げていく、とても難易度の高い練習です。
ポイントは、裏声ミックスから始めるとピュアベルトまで辿り着けないこと。
裏声ミックスは響きの方向性や声帯の使い方が違うため、最初からルートが違います。
このグラデーションエクササイズができるようになると、クラシカルな響きからロックなシャウトまで、あらゆるジャンルで自在に歌いこなせる発声の基礎力がつきます。
▪️張り上げ系
また、女性で地声でラ〜ドくらいまでは押せても、それ以上の音では急に弱々しい裏声にひっくり返る「張り上げタイプ」の方もいます。
さらに、「この音までは地声、ここから裏声ミックスに…」と常に頭で計算しながら歌っているうちに、歌うこと自体が楽しめなくなる人もいます。
私もまさにその一人でした。
▪️ベルトもミックスも裏声もマスターする
REBELTINGではまず地声のエリア(女性F、男性Cまで)を広げ、その後ミックスのエリアも開発します。
マスターコースではブロードウェイ俳優のような力強さと軽やかさが備わったミックスボイスも習得できます。裏声ミックスではなく“本物の”ミックスボイスが手に入るのです。
実は、受講する前は「地声しか出なくなっちゃったらどうしよう…」と少し不安がありました。なぜなら、以前の私は地声をたくさん使うと、その後の裏声系の歌がカスカスになってしまっていたからです。でも実際に始めてみると、そんな心配は全然必要ありませんでした!
ベルトの基礎ができてくると、声帯の筋力や柔軟性がどんどん増していきます。Chico先生はよく例えとして「喉にバレリーナのようにしなやかで力強い筋肉を育てる」と説明してくれます。しっかりパシッと決めた動きも、優雅で繊細な動きもどちらも操れるようになる。そんな筋肉や感覚が少しづつ備わっていきます。
その結果、裏声やクラシカルな発声に戻ったときに、声のポテンシャルが格段に上がっていることに気付きます。実際に、今受講されている音大出身の方は、最初は裏声しか出せなかったのですが、わずか2ヶ月でしっかりとしたベルティングボイスを構築できるようになりました。しかも、その間に参加された声楽の海外研修では「あなたは後ろのポジションがしっかりできていて素晴らしい」と世界中の先生方から絶賛されたそうです。
▪️新しい声の誕生
さらにマスターコースでは、Whitney Houston「I Will Always Love You」のAメロが課題です。ため息のようにソフトで温かいのに、裏声?地声?え、何声なの⁉︎という、あの“理解不能な声”を再現するための特別なテクニックまで学べます。
私にとって、絶対無理だろうと思っていたあの響きが、今は自分の声でできるようになったんです。その結果、裏声もさらに輝きを増し、クラシック系の発声も安定しました。
そして何より、新しい声が誕生した感覚がありました。今までの自分にはなかった響きや色彩が加わり、表現の幅が一気に広がったのです。
そして、歌の世界観やキャラクターに合わせて 裏声ミックス → ミックスボイス → ベルティング と自由自在に切り替えられることが、大きな武器になりました。
▪️多種多様なミュージカル作品に必要なREBELTING
現在上演されてるミュージカル作品は、幅広いジャンルが展開されています。
たとえば 「オペラ座の怪人」のようにクラシック音楽を土台にした作品もあれば、ポップス界のスターが作曲を手がけた作品もあります。エルトン・ジョンは 「The Lion King」や 「Billy Elliot」を、シンディ・ローパーは「Kinky Boots」を生み出し、いずれも世界的に大ヒットしました。
さらに、既存のヒット曲を用いたジュークボックス・ミュージカルも大人気です。We Will Rock You(Queen)、Mamma Mia!(ABBA)、The Bodyguard(Whitney Houston)といった作品はその代表例です。
作品のスタイルが多様であるように、声の表現も多様性を求められます。クラシックからポップス、ロック、R&Bと、幅広い音楽の世界観に対応していくには、声を自由自在に扱えることが基本です。
だからこそ、現代のミュージカルの多様性についていくためには、ただの裏声やミックスではなく、REBELTING の発声力が必要だと思います。
声の可能性を広げ、作品ごとの要求に応えられるようになることが、舞台人にとって最大の武器になり、ジャンルを越えて活躍することができる道標となります。
◉Kahoriによる15分無料カウンセリング
https://calendly.com/rebelting/free
ミュージカル志望の方や声に関すること、NEOコースについてなど気軽にどうぞ!
この記事を書いた人
NEOトレーナー Kahori

プロフィール
ミュージカル女優として、劇団四季をはじめとする舞台で数多くの経験を持つ。主な出演作品は『ライオンキング』『アスペクツ・オブ・ラブ』『ジョン万次郎の夢』など。声の表現力を追求する中でNY留学をするも、発声の課題は解決できず、その後Chico先生の歌声と教えに感銘を受け、REBELTING ACADEMYでの学びを本格的に開始する。